おい。 ウルキオラはすれ違ってから、私を呼び止めた。その静かな声は方向性を持って私の歩みをとめる。 それがなくとも、その白く暗い廊下には余人の姿は見えなかったが。 止まった脚をくるりと回して、ウルキオラと向き合う。 何か御用? 珍しい。と小さく付け加えて、首まで傾げて見せる。 ウルキオラは半身を返して私を見る。大きな緑の眸は感情を映さない。ただ相手を反射して、その感傷を浮き彫りにする。 お前は、とウルキオラが口を開く。 どうしてグリムジョーを選んだ? やけに、ウルキオラにしては干渉的な質問だった。思わず、その表情を探ってしまうがいつもどおり感情の無い白い面があるだけだ。 それでもじっと眺めていると、その白さは熱さえ持っていない気がしてくる。 あいつは片腕を失った。その直後になぜ、あいつを選んだ?再度問われて、私はやっとその意味を考えてみる。 選択の理由とタイミング? 何かを言おうとして、唇をわずかに開いた。そのあとで言うべき言葉が浮ばないと気がつく。答えなど。 にっこりと笑ってやる。 あなたはどんな答えが欲しい? 馬鹿げた問いだと思う。馬鹿げた考えしか持たない私には精一杯といったところか。いや、これは馬鹿にした問い、だったか。 ・・失う可能性に気がつかなかった愚者の、浅ましい執着と、欲。そういったところか。 ウルキオラは一寸も動かずに淡々とそう断じる。まったく何を考えているのかわかりそうも無いこの男の、 胸中というものを読んでやりたい。 残念、違うわ。そういって口元を歪ませてみるが、ウルキオラには効果など無いのだ。 ルピならあんなに可愛らしく顔を歪ませてくれるのに。嬉しくても不機嫌でも。 男はみぃんなロマンチスト、だなんて誰が言い出したことかしら。喪失を怖れるゆえの衝動的な欲求? そのとおりだと、思いながら、私はそれを嘲笑した。 面倒だ。どうでもいいとも、思いながら。 ・・。 ウルキオラは観察者の瞳で私を蹂躙する。これほどの不愉快は無い。 貴方は藍染さまを選んでほしかった?それともあなた自身を? ざんねん。 選択権は、私が持つのだ。