凛然とした声が綴る、言葉はただ流れていた。

 茫洋とした感覚では意味を成さずに、ただ刻み込まれるようなその声を記憶した。

 深海の底から引き上げられたばかりのように、私は膨張して収縮して、私を形成した。


 世界の変わる、硝子の音がしたのだ。


















 あぁ、視線が刺さる、ささる。


 なるほどこれだけ高低差をつくると、客観的というよりさらに遠い気分になる。
 王座というよりやはり、神の御座か。

 睥睨するのか。


 創造主として。



 「おいで、」

 藍染はゆったりとした動作でその座にすわった。

 周囲に浮いていた破面たちの意識がそこに集中する。含まれているものは敬意か、畏怖か、あるいは。


 創造主たる藍染は、それらをやはりゆったりと受け止めて、話を始める。


 「さて、今回皆を集めたのは新しい同胞を迎えるためでね」


 集められた破面たちは、不審を滲ませてしかし微動だにしない。間隔の空いた広間は寒々しい空気で満ちている。

 呼ばれるままに傍らに侍った。上面を滑るような丁寧さで藍染は私を示し、深く優しげな声で冷たい空気を震わせた。


 ひどく、億劫な気分だ。



 そう、は特殊でね。戦闘能力を持たない破面なんだ。斬魄刀さえ持っていない。
 彼女の『核』は彼女自身に封印され、自らを守る術さえない―が、しかし、彼女の保持する霊力は異常に桁外れなのだよ。
 絶対量は十刃よりもなお上位。すばらしく、興味深い。


 「ギン、」


 影から進み出た男、市丸ギンは笑みをひくりともくずさぬまま、曝された私に近づく。

 顔も合わせぬままに、腰が気軽な動作で掴まれ、瞬時に他の破面と同じ視線の高さへと連れ去られた。
 なされるがままの私は、無表情というより、きっと無気力といったほうが正確だろう。

 
 市丸がそこで大仰な仕草で手を振り、哂う。


 「ほな、今からすこぅし、実演してみせましょかァ」


 えぇ?と確認が向けられ、けれど返事も聞かぬうちに眼前に手が伸びてきた。覆うように、頭部をつかむ。



 そして異変。



 加重がいきなり変化したかのような、衝撃。


 自らの内にあったはずのそれに、身体が震えた。

 寒々しかった広間が突然に、騒々しい動揺に乱れるのを感じる。



 市丸が引き出した霊圧は、どろどろと濃度を伴うような濃密さで顕現した。






 誰もが其処で、その巨大さを悟ったように、息をのんだ。